1 家屋改造費など
重度後遺障害を負った被害者が,自宅内における移動などのために行った自宅改造費(リフォーム費用)は,その必要性が認められれば,相当額の賠償が認められることになります。例えば,バリアフリー化に必要となる玄関スロープの設置,居室内の段差解消,トイレ及び浴室への動線確保などのリフォーム工事費用について,賠償が認められることが多いです。
新築工事費用又は転居費用と従前家賃との家賃差額などの,現住居の建て直し又は現住居からの転居のための費用は,建物を改造するよりも新築した方が経済的である又は転居した方が経済的である場合など,新築工事や転居の必要性と相当性が認められる場合に限り,損害と認定されることになります。
なお,家屋改造費や新築工事費が損害と認定される場合,これらの工事に伴う介護負担の軽減が,将来介護費の算定(交通事故⑧「将来介護費(付添費),将来治療費」参照)に影響を及ぼすことになります。
また,家屋の改造などにより同居家族が利便性向上という利益を享受している場合,家族の利便性は「反射的利益」に過ぎないとして減額を否定する裁判例もあります。しかし,全体の工事費から一定割合の減額を認める裁判例や,工事箇所毎にそのような事情の有無を認定した上で,一定限度の減額を認める裁判例もあります
2 定期的な交換が必要な物品
⑴ 自動車等改造費
障害者用の車いすリフトなどが装備された自動車について,重度後遺障害者の移動手段としてその必要性が認められる場合であっても,一般的に自動車が後遺障害と無関係に購入されることが大いため,新車購入費用全額が損害と認定されることは少ないです。例えば,購入費用のうち一定割合の額又は必要な改造費用のみを損害として認定することが多いといえます。
また,将来にわたる自動車の買い替えに伴い改造が必要となる場合,自動車の買替毎に改造費が損害として認定されることになります。具体的には,被害者の平均余命期間における買い替えの回数,各買い替えまでの期間に対応する中間利息控除(将来において発生する損害について現時点において先行して賠償するために控除される利息。)を考慮して損害額が算定されることになります。
例えば,1回あたりの改造費用100万円,平均余命18年,5年毎に3回買い換える場合,現時点において認められる損害額は以下のとおりとなります(以下の計算式の括弧内の数値は,症状固定時,5年,10年,15年に対応したライプニッツ係数(3%)です)。
100万円×(1+0.8626+0.7440+0.6418)=3,248,400円
⑵ 装具・器具等購入費
将来における買い替えの必要が認められる装具や器具などについて,将来における購入費用についても賠償が認められることになります。具体例として,義歯,義眼,義手,義足,メガネ,コンタクトレンズ,歩行補助器具,車いす,盲導犬費用,ポータブルトイレ,電動ベッド,リハビリシューズ,頸椎装具,コルセット,サポーターなどについて,将来における買い替え費用が損害と認定されることになります。
なお,公共団体からの公的扶助等を受けられる場合もありますが,既に支給を受けている(支給が確定している)場合を除き,将来分を控除することにはならないと考えられます。なぜなら,それらの扶助制度が将来においても存続することは不確定であるためです。
以上
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