交通事故と労災保険について 

1 はじめに

通勤中や就労中に交通事故にあった場合,労災保険の適用を受けることができます。

一方,交通事故にあった場合,強制加入保険である自動車損害賠償責任保険(以下,「自賠責保険」と言います。)からの支払を受けることができる場合があります。この場合,どちらの保険を先行して利用すべきなのか迷われる方も多いでしょう。自動車損害賠償責任保険と労災保険では,以下の違いがあります。

 

2 労災保険と自賠責保険の違い

 

自賠責保険 労災保険
過失相殺 過失割合が7割以上あるとされた場合,2~5割の範囲で損害賠償額が減額される。 原則過失相殺はされない。治療費や休業給付が全額支給される。
損益相殺 全額が損害の一部払いになり,損害賠償額の総額を算定する際に自賠責保険において支払いを受けた金額については損益相殺として差し引かれる。 休業療養中に支給される休業特別支給金,後遺障害認定時に支給される障害特別支給金,障害特別年金などは損益相殺の対象にならない。
休業損害 原則として100%支給 労災保険では60%(但し,休業特別 支給金20%)
その他 ・仮渡金制度あり

・慰謝料の支払がある

 

・年金が支給される場合がある(遺族年金、障害年金、傷病年金)

 

3 まとめ

労基署に行って,「自賠責保険を優先させることをおすすめします」と言われた場合でも,それぞれの保険の違いを検討したうえで,いずれの保険を先行させるか決めなければなりません。まずは,一度弁護士にご相談下さい。

以上

弁護士 藤本 智恵

 

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