1 はじめに
交通事故により車やバイクの修理・買替えが必要となった場合,修理や買替えまでの期間に代車を利用することがあります。交通事故被害に遭い,代車が必要になったのだから,当然に相手方に請求することができるかというと,そうとも限りません。
代車費用が事故から生じた損害として認定されるためには,①代車を使用する必要性と,②代車を使用する期間の相当性が必要となります。以下,それぞれの要件について説明いたします。
2 ①代車の必要性
代車を使用する必要性が認められない場合には,そもそも,代車費用は損害として認められません。これまでの裁判例を前提とすると,以下の事情が考慮されます。
・ 被害車両の事故前における使用目的(営業用車両,通勤・通学用,買い物用,レジャー用など)及び使用状況(幼い子供の送迎に使用していた,大量の買い物を運ぶのに使用していたなど)が重要
→レジャー用の使用目的で,月に数回などの使用状況ですと,代車の必要性は認められにくくなります
・ 代替車両が存在し,その使用が可能かどうか
→代替車両が存在し,使用することができる状況にあれば,代車の必要性は認められにくくなります
・ 自家用車の場合は,その使用目的,使用状況に照らして,代替公共交通機関が存在し,その使用が可能,相当かどうかも結論を左右します
→代替公共交通機関が存在する場合,代車の必要性は認められにくくなります
※代車の車種・グレード
代車の必要性が認められるとしても,使用状況などを考慮して,事故車両と相応する車種の代車費用に限り,事故によって損害と認定されることになります。
3 ②代車使用が認められる相当期間
代車の必要性が認められるとしても,いつまでも代車を使用することができるわけではありません。
とはいえ,事故当事者間で修理費用の見積りや過失割合について争いがあり確定できないために,修理や買替えに着手できない場合もあります。それでは,具体的にどの程度の期間について,代車を使用することが認められるのでしょうか。
これまでの裁判例は,加害者が加入する保険会社の説明義務(合理的な修理費用や過失割合に関する説明を行う義務)を認める一方で,被害者側にも損害拡大防止義務を認めています。その上で,「合理的な調査・検討期間が経過したのに被害者がなお修理(買替えも同様)に着手しない場合には,もはや,以後の交渉期間における代車使用料は損害として認めることはできない」と認定しています。
これまでの裁判例を前提とすると,一般的に,修理に必要な期間は2週間程度,買替えに必要な期間は1ヶ月程度であると考えられているようです。もっとも,合理的に必要と考えられる交渉期間や修理費用の見積もりに要した期間なども考慮されることになりますし,損傷の部位,程度や事故車両の車種などによっても上記期間は変動することになります。
4 代車利用について不安を抱えていらっしゃる方は,一度弁護士に相談されることをおすすめいたします。
以上
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