交通事故に遭い、数か月治療していたところ、また別の交通事故に遭ってしまって症状がさらに悪化してしまったり、治療が長引いてしまうというケースが稀にあります。
この場合、被害者としては、二つの事故の加害者に対してどのような請求ができるのでしょうか。
先に起きた事故を第1事故、その後の事故を第2事故として説明します。
まず、第2事故の発生の時点で、第1事故の任意保険会社の対応は打ち切られ、第2事故以降の治療や損害については、第2事故の任意保険会社が対応していくことになります。
ただ、第1事故から生じた損害と、第2事故から生じた損害を明確に区別するのは難しいことです。例えば、1事故目が歩行中の事故で、足の骨折で2事故目が運転中の事故で頚椎捻挫などであれば、受傷部位が全く異なるので区別が容易ですが、1事故目2事故目とも乗車中の事故であれば、受傷部位が重なることが多いと思われます。その場合、第2事故で後遺症が残った場合など、第2事故後に生じた損害について、第1事故の加害者にも請求していくことができるのでしょうか。(以下、受傷部位が第1事故と第2事故で重なる場合について述べます。)
この点、現在の裁判実務では、第2事故以降の損害について、第1事故と第2事故が影響して生じたものであるとして、寄与度(結果に影響した程度)に応じて割合的に負担すべきとされます。
そして、寄与度がどの程度かは、事故の態様、症状、第1事故による治療でどの程度改善していたか等により判断されます。
したがって、第2事故による損害を第1事故の加害者にも請求できる可能性があります。なお、第1事故の任意保険会社は第2事故が発生した後すぐに示談の提案をしてくることもあります。ただ、第2事故の治療中で全体の損害が明らかでない間は、第1事故のみ先行して示談することは避けた方がよいでしょう。第2事故で被害者にも過失が認められるような場合は、特に第2事故による治療等が終了してから示談したほうがよいと思います。
また、このようなケースの場合、自賠責保険は2枠分使えるようになることなどから、複雑な処理が必要になる場合があります。
2つの事故により治療も長引いてしまい、気持ちもまいってしまわれるでしょう。事故の対応については、早めに専門家に相談することをお勧めします。
関連記事はこちら
- 交通事故⑬ 損益相殺
- 交通事故⑭ 人身傷害保険
- 交通事故解決事例 「治療費支払い打ち切り事例への対応」
- 交通事故⑫ 素因減額
- 交通事故⑪ 過失相殺
- 交通事故コラム 治療打ち切りへの対応
- 交通事故⑩ 傷害慰謝料・後遺障害慰謝料
- 交通事故⑨ 家屋改造費,定期的な交換が必要な物品
- 交通事故⑧ 将来介護費(付添費),将来治療費
- 交通事故⑦ 労働能力喪失期間
- 交通事故⑥ 後遺障害逸失利益(後遺障害等級の認定及び労働能力喪失率が問題となる事案)
- 交通事故⑤ 後遺障害逸失利益(算定方法,基礎収入,問題となる症状)
- 交通事故④ 休業損害(休業日数,退職・解雇事例)
- 交通事故③ 休業損害(基礎収入の認定方法)
- 交通事故② 入通院に伴う費用(入院雑費,通院交通費など)
- 治療費~必要性・相当性(特に,整骨院の治療費)
- 交通事故における立証責任と事故態様の立証
- 物損に関する慰謝料について
- 交通事故における代車費用
- 交通事故と労災保険について
- 業務中の交通事故の賠償金、会社に求償できる?
- 示談交渉成立後に後遺症が発覚した場合
- 通院交通費
- 交通事故の自覚症状と他覚症状
- 物損事故の場合は慰謝料が認められない?
- 生活保護と交通事故ー医療扶助相当額の返還についてー
- 相手方から人身事故扱いしないでほしいと言われたら?
- 自賠責による病院代直接払
- 死亡事故における慰謝料請求
- 後遺障害認定について
- 代車使用料
- 所有権留保付・リース車両の損害賠償請求者と、修理未了の損害賠償請求権の有無
- 事前認定(一括請求)と被害者請求(16条請求)について
- 車両の評価損について
- その示談金、増額できるかも?
- 交通事故によって必要となった介護費用について
- 自賠責の被害者請求
- 「仮渡金」制度とは?
- 減収がない場合の逸失利益