まだ自動車ローンの返済途中であるにもかかわらず交通事故にあって自動車が損傷してしまいました。
Q1 車検証上も所有者ではなく使用者にすぎません。このような場合に自動車の修理代等の損害賠償請求をすることができるでしょうか。なお、自動車がリース車両の場合はどうでしょうか。
A1 できます。
ちなみに、以下のような判例があるので参考までに引用します。
「まず、被控訴人は所有権留保車両の使用者であるところ、留保所有権は担保権の性質を有し、所有者は車両の交換価値を把握するにとどまるから、使用者は、所有者に対する立替金債務の期限の利益を喪失しない限り、所有者による車両の占有、使用権限を排除して自ら車両を占有、使用することができる。使用者はこのような固有の権利を有し、車両が損壊されれば、前記の排他的占有、使用権限が害される上、所有者に対し、車両の修理・保守を行い、担保価値を維持する義務を負っている。したがって、所有権留保車両の損壊は、使用者に対する不法行為に該当し、使用者は加害者に対し、物理的損傷を回復するために必要な修理費用相当額の損害賠償を請求することができる。その請求にあたり修理の完了を必要とすべき理由はない。」(東京地方裁判所平成26年11月26日判決)
リース車両の場合も修理・保守の義務はユーザーが負担することになるので可能です(東京地方裁判所平成21年12月25日判決)。
Q2 相手方に請求できるかどうかわからないのでまだ修理に出していませんが見積もりはとりました。このような場合でも修理費相当額の損害賠償請求ができるのでしょうか。
A2 できます。
ちなみに以下のような判例もあるので参考までに引用します。
「被告らは、原告車両は現在においても修理がされておらず、今後も修理する可能性はないから、損害賠償の対象とすべきでないと主張するが、原告車両が本件事故によって現実に損傷を受けているものである以上、これによる損害は既に発生しているものというべきであり、右主張は採用できない。」(大阪地方裁判所平成10年2月24日判決)
Q1で引用した東京地方裁判所平成26年11月26日判決引用部分最後にも同趣旨の載があります。
関連記事はこちら
- 交通事故⑬ 損益相殺
- 交通事故⑭ 人身傷害保険
- 交通事故解決事例 「治療費支払い打ち切り事例への対応」
- 交通事故⑫ 素因減額
- 交通事故⑪ 過失相殺
- 交通事故コラム 治療打ち切りへの対応
- 交通事故⑩ 傷害慰謝料・後遺障害慰謝料
- 交通事故⑨ 家屋改造費,定期的な交換が必要な物品
- 交通事故⑧ 将来介護費(付添費),将来治療費
- 交通事故⑦ 労働能力喪失期間
- 交通事故⑥ 後遺障害逸失利益(後遺障害等級の認定及び労働能力喪失率が問題となる事案)
- 交通事故⑤ 後遺障害逸失利益(算定方法,基礎収入,問題となる症状)
- 交通事故④ 休業損害(休業日数,退職・解雇事例)
- 交通事故③ 休業損害(基礎収入の認定方法)
- 交通事故② 入通院に伴う費用(入院雑費,通院交通費など)
- 治療費~必要性・相当性(特に,整骨院の治療費)
- 交通事故における立証責任と事故態様の立証
- 物損に関する慰謝料について
- 交通事故における代車費用
- 交通事故と労災保険について
- 業務中の交通事故の賠償金、会社に求償できる?
- 示談交渉成立後に後遺症が発覚した場合
- 通院交通費
- 交通事故の自覚症状と他覚症状
- 交通事故の治療中にまた交通事故に遭ってしまったら?
- 物損事故の場合は慰謝料が認められない?
- 生活保護と交通事故ー医療扶助相当額の返還についてー
- 相手方から人身事故扱いしないでほしいと言われたら?
- 自賠責による病院代直接払
- 死亡事故における慰謝料請求
- 後遺障害認定について
- 代車使用料
- 事前認定(一括請求)と被害者請求(16条請求)について
- 車両の評価損について
- その示談金、増額できるかも?
- 交通事故によって必要となった介護費用について
- 自賠責の被害者請求
- 「仮渡金」制度とは?
- 減収がない場合の逸失利益