交通事故⑫ 素因減額

1 素因減額とは 被害者が事故前から有していた事情(これを「素因」といいます。)が損害の発生や拡大に影響している場合に、賠償金の算定においてそのような事情を考慮して、賠償金の額を減額することを素因減額といいます。 賠償金の算定で考慮されうる素因は、「身体的素因」と「心因的要因」の2つに分けられます。 2 身体的素因 ⑴  最高裁平成4年6月25日判決 【事案】 事故前から一酸化炭素中毒 続きを読む >>

交通事故⑩ 傷害慰謝料・後遺障害慰謝料

1 傷害慰謝料 ⑴ 傷害慰謝料とは 傷害慰謝料とは「入通院慰謝料」とも呼ばれるもので,交通事故によって負ったけがの治療のための入通院期間に応じて支払われる賠償金のことです。交通事故によって怪我を負い,入院や通院を余儀なくされたことについて支払われる慰謝料(精神的損害に対して支払われる賠償金のこと。)です。 ⑵ 傷害慰謝料の基準 傷害慰謝料の基準として,いわゆる「赤い本」と呼 続きを読む >>

交通事故⑨ 家屋改造費,定期的な交換が必要な物品

1 家屋改造費など 重度後遺障害を負った被害者が,自宅内における移動などのために行った自宅改造費(リフォーム費用)は,その必要性が認められれば,相当額の賠償が認められることになります。例えば,バリアフリー化に必要となる玄関スロープの設置,居室内の段差解消,トイレ及び浴室への動線確保などのリフォーム工事費用について,賠償が認められることが多いです。 新築工事費用又は転居費用と従前家賃との 続きを読む >>

交通事故⑧ 将来介護費(付添費),将来治療費

1 将来介護費(付添費) ⑴ 必要性 自賠責保険の後遺障害に関して規定する自賠法施行令別表において,介護を必要とする後遺障害として規定されているのは,別表1(神経・精神系統の障害と胸腹部臓器の障害について規定する表)の1級(常時の介護が必要な程度の障害)と2級(随時の介護が必要な程度の障害)のみです。 しかし,これらの等級以外にも,別表2の1級と2級については,一般的に将来介護費 続きを読む >>

交通事故⑦ 労働能力喪失期間

1 労働能力喪失期間 後遺障害が認定されるということは,働く能力が一定割合で失われたと評価されるということですが(交通事故⑥「後遺障害逸失利益」の記事参照),働く能力が失われたと評価される期間はどの程度になるのでしょうか。 この,労働能力が失われたと評価される期間のことを,「労働能力喪失期間」といいます。 2 原則 後遺障害とは,治療によっても症状の改善が認められない段階に 続きを読む >>

交通事故⑥ 後遺障害逸失利益(後遺障害等級の認定及び労働能力喪失率が問題となる事案)

1 労働能力喪失率とは,後遺障害により失われた働く能力の割合ことで,後遺障害等級毎に以下のとおり規定されています(自賠法施行令別表第1及び第2)。 1~3級:100%   9級: 35% 4級: 92%    10級: 27% 5級: 79%    11級: 20% 6級: 67%    12級: 14% 7級: 56%    13級:  9% 8級: 45%  続きを読む >>

交通事故⑤ 後遺障害逸失利益(算定方法,基礎収入,問題となる症状)

1 後遺障害とは 後遺障害とは,「傷害が治ったとき身体に存する障害」と規定されています(自賠法施行令2条1項2号)。分かりやすく言いますと,治療を継続しても,それ以上治療の効果が認められなくなった段階(症状固定)で,身体に残ってしまった症状のことを意味します。   2 後遺障害逸失利益とは 後遺障害逸失利益とは,事故によって生じた後遺障害による,事故がなければ将来 続きを読む >>