(1)むち打ち症とは
むち打ち症は、頸椎捻挫、頸部挫傷、外傷性頸部症候群など様々な傷病名で呼ばれ、いくつかの分類がされています。むち打ち症の場合、本人の自覚症状以外に症状の原因となっているものが見当たらないため、症状固定時期や後遺障害の有無あるいはその等級をめぐって問題になる場合が多くあります。
むち打ち症の定義については定まったものはなく、「非接触性の急激な加速減速による頭頸部の外傷」などと言われています。
(2)むち打ち症の症状
むち打ち症による症状は以下のとおり損傷内容、時期等によって異なります。なお、他覚所見とは、医師の診察や各種検査等により導き出される被害者の客観的な異常所見のことを言います。
①受傷直後の症状
(自覚症状)
・頭がぼーっとした状態
・頂部痛・圧迫感・緊張感
・吐き気
・意識混濁
・頭痛
・上肢のしびれなど
②急性期・初期症状(受傷後数時間~1週間)
(自覚症状)
・頂部痛・圧迫感・緊張感
・頭痛・頭重感
・頸椎運動制限
・肩こり
・吐き気
・上肢のしびれ
・腰痛など
(他覚所見)
・頸椎運動制限
・項頸部筋など
③急性期・後発期(受傷後2~4週間以後)
(自覚症状)
・頭痛
・めまい
・悪心
・耳・眼症状
・上肢放散痛など
(他覚所見)
・知覚障害
・神経根症状
④慢性期
・頸部痛
・頭痛
・めまい
・頭部・顔面領域のしびれ
・眼症状
・耳鳴り及び難聴
・吐き気・嘔吐
・四肢症状
・腰痛
・その他不眠・集中力低下など
(3)むちうち症による後遺障害等級
認定される後遺障害の等級は基本的には以下のいずれかです。
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
上記いずれの等級になるか、それとも後遺障害がないものと判断されるかは、他覚所見(他覚的な証明)があるかが要点です。
神経損傷を直接証明できる場合はもちろん、①画像から神経圧迫の存在が考えられ、かつ、②圧迫されている神経の支配領域に知覚障害などの神経学的異常所見が確認されれば12級と認定される可能性が高くなります。
上記証明に疑問が残る場合であっても、画像上の異常は何らかの形で症状を発生させる要因があることを推測させるとして合理的説明が可能な場合には14級が認められる可能性もあります。